工程分析

定義

 工程分析とは、「 生産対象物が製品になる過程、作業者の作業活動、運搬過程を 系統的に、対象に適合した図記号で表して調査・分析する手法である。作業を加工、運搬、検査、停滞の基本要素(工程)に よって表 現・把握し、その編成の合理化によつて作業の改善をはかる。

基本図記号

 JISに よって工程図記号が定められている。生産対象物に変化を与える過程をこ の工程図記号で系統的に示した図を工程図という。 工程図記号は、基本図記号と 補助図記号などに分類されてい る。補助図記号には、「 流れ線 ―」、「 区分一一」、「 省略====」 などがある。
 2つの要素工程が持つ機能または状態が、 1つ の要素工程で同時にとられる場合 には、それぞれの要素工程の記号を複合して図示することができる。複合記号は、 主となる要素工程の記号を外側に、従となる要素工程の記号を内側に示す。なお、 複合記号においては、運搬記号は⇒を用いる。

工程分析

1.単純工程分析

 単純工程分析とは、原材料、部品がプロセスに投入される点およびすべての作業 と検査の系列を表現した図表のことである。したがって、運搬、貯蔵、滞留は含め ない。長所としては、原材料から製品へのプロセス全体を一日で把握できる点であ る。そのため、より詳細な分析に先だつての全体プロセスを統括的に把握する場合 に用いられる。また、製品別レイアウトの基礎資料として利用されることもある。

2.製品工程分析

 製品工程分析とは、「生産対象の物を中心に、原材料、部品などが製品化される 過程を工程図記号で表して調査・分析する手法JIS Z 8141‐5202」 である。材料、 部品などが加工されながら完成品に変化する工程の流れを、カ ロ エ、運搬、検査およ び停滞を表す工程図記号を用いて記述し (これを製品工程分析図という)、 分析す る方法である。製品工程分析の応用型として、工程配置図上に示した流れ線図があ る。

3.作業者工程分析

 作業者工程分析とは、生産主体の作業者を中心に作業活動を系統的に工程図記号 で表して調査・分析する手法である。作業者工程分析は、作業者の行動を製品の流 れと同様に考え、製品工程分析と同じ工程図記号を用いて記述する。分析は、工程 図記号のカ ロ エ、検査、運搬、停滞をそれぞれ作業者の作業、検査、移動、手待ちの 記号として使用する。作業者工程分析は主に作業台のレイアウト 、作業手順や作業 動作などの改善を目的として行われることが多い。

4.流れ線図(フローダイヤグラム)

 流れ線図とは、設備や建屋の配置図に工程図記号を記入したものをいい、各工程 図記号の位置関係を示す。工程分析図では加工、運搬、検査、停滞の状態を把握で きるが、職場の中を対象物がどのように動くかは把握しにくい。配置図に対象物や 人の動きを工程図記号とそれを結ぶ流れ線図で書くと、物や人の流れ、逆行した流 れ、無用な移動などが視覚的に把握できる。このように流れ線図を利用して人や物 のムダな動きなどを分析する手法を流れ分析という。

5.多品種工程分析 (加工経路分析)

 多品種工程分析とは、加工経路分析ともよばれ、工程 (加 工)経路の類似した製 品や部品などをグループ化するために、工程 (加工)経路図を作成して分析するこ とである。

6.フロムツーチャート(流出流入図表)

 フロムツーチャートとは、流出流入図表ともいい、多種少量生産の職場におけ る、機械設備や作業場所の配置計画をするときに用いられるツールである。

運搬分析

 工場で物を作る際には、物の移動や運搬は必ず発生する。通常、運搬そのものは 付加価値を生まない作業であるため、ロスの1つ として取り上げられる。運搬ロス の少ないセルを構成した∪ 字ライン生産方式や1人生産方式などであっても、セル 間の移動や搬出の際の移動など、最小限の移動は必要となっている。つまり、運搬 は付加価値を生まないだけに、いかに効率的な運搬の仕組みを作るかが課題とな る。ここでは、3つの運搬分析を説明する。

1.運搬工程分析

 運搬工程分析は、観測対象となる品物が加工され製品へと流れていく過程(工程系列)を 系統的に調べ、 「図表」や「運搬分析の基本記号」を用いて記録し、分 析・検討する方法である。

2.運搬活性分析

 運搬活性とは、対象品の移動のしやすさであり、単に活性ともいう。運搬活性分 析は、活性の維持という観点から、品物の置き方や荷姿について分析・検討する方 法である。そして、活性を5段階に分けて、 「活性示数」を使つて運搬状況を分析 するものである。なお、この「示数」の意味は、置かれている品物に対して、移動 するための4つ の手間のうち、すでに省かれている手間の数をいう。この手間の数 は、少ないほど良いので、活性示数は値が大きいほど良いことになる。

3.空(カ ラ)運搬分析

 空運搬とは、品物の移動を伴わずに、人や運搬機器のみ移動することをいう。
「 空運搬分析」では、運搬の状態を分析・検討し て空運搬を減少させることを狙い とし ている。分析では、品物の移動だけでなく、人や車の動きを調査することも重要である。空運搬の減少や運搬改善のために 「空運搬係数」が利用されている。

4.マテハン(マテリアルハンドリング)

 マテハンとは、物の移動、積み下ろし、取り付け、取り外し、納める、蓄える、 取り出すなど、一貫した物品の取扱いのことをいう。運搬の合理化に役立てるた め、実践的な経験の蓄積や基礎的な考察から導かれた改善事項を集成したものを 「運搬の原則」といい、その一部には以下のようなものがある。

活性荷物の原則

 品物を動かしやすい状態に保ち、品物の活性を維持し向上さ せようという原則である。これは、 「取扱い」のムダを排除 するためのもので、ユニットロードシステムやパレットシス テムの活用等があてはまる。 

直線化の原則

 流れの原則とも呼ばれる。運搬経路は、逆行、屈曲を避けて、 極力直線にするという考え方である。物理的な直線は無理とし ても、一定方向に物が流れるようにすることで直線化すること を図る。 

スペース活用の原則

 バラ置きや、床へのじか置きを除去し床面積を活用する という考え方である。箱に入れるとか、パレットに載せて積み上げる等がこの原則の具体例となる。

継ぎ目の原則

 生産工程における移動の終点から次の移動の始点までの間で、 積替、載替、再取扱等のムダな手間をかけることを極力なくす という原則である。

自重軽減の原則

 運搬具の自重を減らすことである。運搬具は運搬される品物 のように片道ではなく往復運搬されるものであるため、その重量の影響は大きいとされる。

工程分析による改善(ECRSの原則による改善)

 分析の基本は、加工以外は付加価値を生まない工程なので削減するという考え方 にある。もちろん、加工そのものも加工順序の見直し、機械。 工具の改善などによ る改善を行う。

  • 運搬:経路短縮、運搬回数削減、自動化
  • 検査:不要な検査廃止、方法改善、自動化
  • 停滞:適正在庫見直し、作業方法・保管方法改善

・関連用語: 動作研究

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