動作研究

定義

 動作研究とは、「 作業者が行うすべての動作を調査・分析し、最適な作業方法を 回璽回 求めるための手法の体系」 である。作業する人間の身体動作、 目の動きを分析し、非効率な動作の排除、動作の組替えなどで改善をはかる。 作業動作の改善では、作業者の意識が非常に重要となる。
「 作業方法または動作 方法について、その問題点が判断でき、より能率的な方法を探し 続ける心構え」 のことをモーションマインド という。

動作経済の原則

 動作研究は、次に示すような3つ の領域に対して問題点の抽出を行い、それぞれ 最適な方法へと改善するために行われるものである。最適な方法とは、動作経済の 原則に基づいて「もつと楽に効率を上げていく 」ことを目的として設計されるので ある。
 動作経済の原則は、動作のあり方についての法則であり、この原則に則った仕事は、経済的であるといえる。つまり、この原則に反した動作は、疲労を伴い、非能率で、効率が悪いことになる。作業動作についての検討・改善を行う場合は、この原則に沿ったかたちで進めるのが望ましい。
 次に代表的な動作経済の原則を示す。

1.身体部位の使用に関する原則

・両手は、同時に動作を始め、あるいは終わる。
・両手は、休憩時間以外は同時に体めてはならない。
・腕の運動は、左右対称的に、また同時に行う。
・身体の運動部分をなるべく指や手などによる小さい動きで行う。
・作業は、落とす、転がす、弾むなどの重力、慣性などの自然な力を利用して 容易に行う。
・動作は自然な姿勢を保ちリズムよく行う。
・他の身体部位でできる作業は、手や指や目を使わないようにする。
・運動の方向を急に変更せずに、連続した曲線状の運動とする。

2.作業場の配置に関する原則

・工具や材料は、作業者の手の届く定位置に配置する。
・工具や材料は、作業位置の周辺で、できるだけ作業者の前面に配置する。
・工具や材料は、最良の順序で作業がしやすいように配置する。
・作業台や椅子は、作業者の体格に合わせて正しい姿勢がとれるような高さと 形にする。
・物の供給や搬出は、慣性や重力を利用して行う。
・作業の性質に適した通風、温度、湿度、採光および照明を与える。

3.工具・ 設備の設計の原則

・機械類の操作は足を有効に使って、手の負担が軽くなるように設計する。
・2つ以上の工具は、できるだけ1つ に組み合わせる。
・ハンドルなどの握り部分は、手のひらに当たり握りやすい形状にする。
・できるだけ専用の工具を使用する。

作業空間

 作業を遂行する時に、作業者が身体各部を動かすのに必要な作業範囲を作業空間 (ま たは作業域)と いう。作業空間には最大作業域と正常作業域がある。最大作業 域とは、固定した肩を中心に、手を伸ばした時の手の届く範囲を指す。これ以上の 範囲になると肩を動かさなければならない。また、正常作業域とは、上腕を身体に 近づけ、前腕を自然な状態で動かした範囲を指す。材料や工具は、できるだけ正常 作業域のなかに置くように心がけ、やむを得ない場合でも最大作業域を超えないよ うにすることが望ましい。

両手動作分析

 動作研究には、動作レベルで分析する「両手動作分析」(サーブリッグ分析は動 素レベル)がある。 作業を観察し、両手の動作の順序や仕方を両手と関連づけて把握し、工程図記号 の基本図記号またはサープリッグ記号を用い て図表化する。動作の順序や方法の問題点、手待ち、ムリ・ムダな動作などを発見 して改善するための手法である。

サーブリッグ分析(微動作分析 )

 ギルブレス(F.B.Gllbreth)が考案し た方法で、微動作分析ともよばれる。あら ゆる作業に共通する基本動作を18種類の動素(サ ーブリッグ)に分解して分析す る。サーブリッグ記号は、要素動作を分析するためにギルブレスが考案した分析記 号である。
 サープリッグ記号は、有用度により第1類 「必要な要素」 、第2類 「動作を遅れ させる要素」 、第3類 「仕事に寄与しない要素」に分類される。

第1類 :動作の基本となるもので、仕事そのものと物の取扱いからなる。この 中で、価値を生む要素は「組み合わす」「使う」「 分解する」のみであ る。
第2類 :動作を遅れさせる要素で、治工具の置き方・使い方や材料の置き方に問題がある場合に発生する。
第3類 :仕事が進んでいない状態であり、作業動作の不均衡(特 に両手)や前 後工程とのつながりの悪さ、などが原因で発生する。 上記の第1類の価値を生む仕事そのものの3つ の動素を除くと、その他はすべて 改善すべきものといえる。そのため、それらはまず排除が検討されるべきである。

連合作業分析

 連合作業分析とは、「人と機械、2人以上の人が協同して作業を行うとき、その協同作業の効率を高めるための分析手法」である。つまり、人 や機械のさまざまな組み合わせ作業をより効率的に行うために、個々の関連を時間 的な経過の面から分析して、より効果的な方法へ組み替える分析手法である。この 分析で用いられるのが「連合作業分析図表」であり、これには「 組作業 (人一人 ) 分析図」「 人―機械分析図」などがある。

1.連合作業分析の目的

 人や機械の手待ちロス、 停止ロス (機械干渉)を 明確にして、 改善の原則 (ECRS の原則)な どを適用して、そのロスを減少させながら、作業周期の時間短縮、人や 機械の稼働率向上、機械持ち台数の適正化、配置人員の削減をはかることが目的と なる。

2.組作業分析

 複数の作業者が協同 (連合)し て行う作業を組作業という。組作業分析は連合作 業分析の一種で、組作業が行われているとき、その協同作業の効率を高めるための 分析手法である。作業者相互の稼働関係を記録・分析し、作業方法や人の配置など の改善をはかり、受け持ち仕事量の不均衡や手待ちの是正、人員削減を実施する。

メモモーション分析とマイクロモーション分析

 メモモーション分析とは、通常の撮彩スピード より遅く撮影し、通常の速度で再 生しながら分析する手法である。作業を1秒間に1コ マという具合に撮影するた め、長時間の作業でも短時間で検討ができる。つまり、ビデオ分析の早回し 再生と 同様の効果が得られる。普通に見ていると気がつかない動作が、見る速度を速める ことで目立つようになる性質を利用したものである。 マイクロモーション分析とは、通常より早いスピード で撮討しておき、通常のス ピード やコマ送り、あるいは遅いスピード で再生して分析することである。つまり スローモーションである。対象物の詳細かつ微細な動きの把握など、微細な作業の 時間研究のために用いられる方法である。

VTR分析 (ビデオ分析 )

 写真タイプなどのメモモーション分析と違って、現像が不要なため、すぐに再 生・分析が可能である。撮影後はスロー、早送りやコマ送りなどもできるため、分 析を詳細に行うことが可能である。現在では主流の分析手法となっている。

・関連用語: 工程分析

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