SCM

定義および概要

 SCMとは、「資材供給から生産、流通、販売に至る物又はサービスの供給連鎖をネットワークで結び、販売情報、需要情報、などを部門間又は企業間でリアルタイムで共有することによって、経営業務全体のスピードおよび効率を高めながら顧客満足を実現する経営コンセプト」IS Z 8141-2309」と定義されている。SCMの目的は、キヤッシュフローマネジメントを実現するとともに、最新の情報技術やERPシステムなどを活用し、市場の変化に対してサプライチェーン全体を俊敏に対応させることである。これにより、部門間や企業間における業務の全体最適化をはかることができる。
 サプライチェーン(SC)の構成員は、ITで在庫(材料・製品)情報、売れ行き情報、販売計画、生産計画、材料入荷計画などの情報を共有する。これにより、SC間での余分な在庫の削減が可能となり(適正在庫)、また急な注文の減少により急な配送も減少する(在庫の削減、物流費の減少)。小売店頭での売れ行き情報がリアルタイムでつかめ、需要予測の精度が向上する。この結果、販売計画、生産計画の精度が上がる。原材料の手配については、従来、メーカーが発注してから供給者が(在庫がない場合)原材料を発注するというやり方で調達リードタイムが長くなることもあった。その結果、メーカーの生産リードタイムは長期化する傾向にあった。しかし、SCMでは、原材料の供給者はメーカーの材料在庫や生産計画を把握できるので、それに対応した入荷計画や納入計画を立案し実行できる(この情報をメーカーも共有する)。つまり、適正在庫による即納が可能となり、メーカーの生産リードタイムの長期化への影響がほとんどなくなるため、従来と比べ生産リードタイムの短縮が図れる。

※ メーカーが、さらに、小ロット化対応や見込みの受注製品化などのフレキシブルな生産形態に取り組むとことによる生産リードタイムの短縮を進めると、SCMの効果は大きく増大し、より大きなCS(顧客満足)も達成できる。

MRPの発展とSCM

 SCMを実現するためにはITが必須であり、その流れの源流にはMRPがある。ここでは、MRPからERP・SCMへの発展のプロセスを見ていくことにする。

 1970年代前半までのMRP(Materiat Requirements Planning:資材所要量計画)は、第1段階というべきレベルのものである。MRPによって各部門に資材所要量の情報が渡されたなら、それでMRPとしての役割を終えることとなり、MPS(基準生産計画)への情報のフィードバックがなかった。
 1970年代前半以降に第2段階として、クローズドループ型MRPとよばれる段階に入つた。クローズドループ型MRPは、基準生産計画に基づき、資材所要量計画に加えて能力所要量計画(CRP)についての関数を含んでいる。CRP(CapacityRequirements Plannlng:能力所要量計画)とは、工程ごとの生産能力と作業負荷を考慮して工程計画を立案するものである。また、常に計画を妥当な値に維持できるように実行関数からのフィードバックを行う機能も兼ね備えている。
 その後、第3段階としてMRP Ⅱ に発展していく。MRP I(Manufacturing Resources Plannlng Ⅱ :製造資源計画)とは、「資材所要量計画だけでなく、要員、設備といつた資源も管理対象として、製造・購買などの製造企業の活動を計画し、管理する総合的生産管理の概念と技法JIS Z 8141-2108」である。生産に必要な資材と資源(人、設備など)の両方を計画し、生産の実施をサポートする機能を含んだ製造資源計画なのである。MRPIはMRPの機能を財務。会計情報とリンクさせることにより経営計画との連携を可能にした点で特徴があり、この機能はさらに発展して次のERPに引き継がれていく。
 そして、第4段階はERPやSCMへと発展してきた。ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源管理)とは、「販売・在庫管理・物流の業務、生産管理または購買管理の業務、管理会計または財務会計、人事管理などの基幹業務プロセスに必要なそれぞれの機能を、あらかじめ備えたソフトウエア群である統合業務パッケージを利用して、相互に関係付けながら実行を支援する総合情報システム」IS Z 8141‐ 2114」である。
また、SCMは、MRP Iに、生産計画やスケジューリングなどの計画業務の統合化あるいは密な連携を図ることで、市場の要求に柔軟に対応しながら企業の利益最大化を図るためのシステムを加えたものである。激しい需要変動に柔軟かつ機敏に対応する必要性の高まりとともに重要性が認識されている。

・関連用語: ERPMRP

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