POSシステム

 POS(POint Of SateS)システムは、光学式自動読取方式のレジスタにより、単品別に販売情報を収集・蓄積し、さまざまな用途に利用するものである。POSシステムの最大の特徴は、「単品レベルでの管理」が可能なことである。商品ごとに、いつ、いくらで、いくつ売れたかというデータがリアルタイムに把握できる。

―般にPOSシステムのメリットは、導入しただけで得られるハードメリットと、POSシステムやデータを有効活用することによって得られるソフトメリットに分けられる。

レジ業務の効率化

 POSは販売時点での情報収集のツールであり、同時に精算処理のツールでもある。POSシステム普及の要因のひとつは、精算業務を効率化しつつ、同時にデータも集まることにある。つまり情報収集のための特別の処理を必要としない。さらにPOSレジでは、スピードや正確さが著しく向上する。またレジ担当者の教育も容易になる。

店内業務の効率化

 現在では、ほとんどの商品にはあらかじめバーコードがマーキングされており、POSを導入すれば、ひとつひとつの商品に「値札付け」をする必要がなくなる。生鮮品など」ANコードがついていない商品に関しては、店でバーコードをつける(インストアマーキング)必要があるが、その場合でもバーコードプリンタを使って効率的に処理できる。またレジでのミスが減るため、出納管理なども大幅に効率化される。POSのハードメリットが「効率性の向上」であるとすれば、ソフトメリットは店舗運営の「効果の向上」である。ソフトメリットを享受するには次項の「POSシステムの活用」が重要である。

POSシステムの活用

 POSデータは使い方によつては大変有効であるが、「売れた」という「結果のデータ」である。つまり、それだけでは、「なぜ売れたのか(あるいは売れなかつたのか)」を知ることはできない。

POSのソフトメリットを得るためには、次のようなポイントがある。

仮説検証型アプローチ

 「売れた」という事実は、さまざまな要因の結果である。POSデータを有効に活用するためには、それらの要因とPOSデータの関係をとらえていくアプローチが必要である。

自店以外のデータの活用

 POSシステムは正確に「売れた」データを提供してくれるが、それはその時点で自店に存在する商品についてのデータである。つまり、自店で取り扱っていない商品については、たとえ他店では一番の売れ筋商品でも「売れた」というデータを得ることはできない。全国POSデータランキングや地域レベルでのPOS集計データなど、外部のPOSデータを集計したものをマクロデータというが、これを活用し自店の品揃えに反映する。

顧客購買データの活用

 POSシステム単独では、「誰が買ったのか(あるいは買わなかったのか)」という顧客に関するデータはまつたく提供してくれない。日の仮説検証を進めていくうえでも「誰が」という部分が抜けていては、仮説の精度を上げにくい。この「誰が」のデータを提供してくれるものが顧客ID付きPOSデータである。

顧客ID付きPOSデータ

 顧客lD付きPOSデータは、消費者の購買履歴を捕捉するデータである。FSP(後述)を導入している小売業者は、会員となった顧客にIDカードを提供し、買物時
に提示するように求め、買物金額に応じて会員顧客にポイント蓄積などの特典を提供している。これにより、顧客別の購買履歴が捕捉できることになる。データ量が大きく、数十万人から数百人という規模のものもあり、消費者の購買履歴をとらえることが可能となる。

POSデータと顧客属性データにより可能な分析

 属性のわかつている顧客ごとの購買履歴データを分析することにより、POSデータのみでは不可能な次のような分析が可能となる。

  • 購入者属性分析
  • 購入者の属性から、属性とストアコンセプトとの整合性を確認したり、コンセプトを再設定したりする。
  • 非購入者の属性から、新たなターゲットの設定を検討する。
  • 購入料分析
  • 大量購入者・少量購入者を区別し、それぞれに対応したプロモーシヨンを行う。
  • 商品購入間隔分析
  • 顧客属性による購入頻度を分析し、ストック期間(お米やビールなど)を考慮したプロモーションを行う。
  • ブランド・スイッチ分析
  • 特定の顧客層(購入頻度が高いなど)のブランドスイッチを分析する。
  • ある商品の購入客の他の商品の購入状況を分析する。

 

マーチャンダイジングへの活用

 POSデータの品揃えや売価設定などマーチャンダイジングヘの活用としては、次のようなものがある。

売れ筋管理

 売れ筋といつた場合、単に売上が大きい商品を意味する場合と、売上と粗利益のクロスABC分析により売上も粗利益も大きいものを意味する場合とがある。どちらにしてもPOSから得られる商品別の売上個数と売価がもとになる。

死に筋管理

 売れ筋同様、死に筋も単に売上が小さい場合と売上と粗利益の両方が小さい場合がある。
死に筋リポート(売上ゼロリポート、ヮーストリポート)の作成に当たつては次の2点に留意する必要がある。

①基準の明確化
 品切れ商品は、「商品があるのに売れない」のではない。また新規取扱商品は入荷するタイミングとリポート対象期間の取り方によっては、これから売れるのに「死に筋」としてリポートにのる可能性もある。したがつて、店頭から排除すべき死に筋の基準をあらかじめ明確に設定することが必要である。

②商品マスタフアイルの正確性維持
 取扱中止や廃止商品が商品マスタフアイルに削除されないまま存在すれば、必ずその商品は「死に筋」としてリポートされる。その数が増えるとリポートそのものの信頼性が低下し、誰も利用しなくなる。

販売促進

 気候要因(季節、天候、温度、湿度)や社会地域的要因(運動会などの行事、曜日、時間帯など)は、コーザルデータとよばれる。コーザルデータとは、価格以外で売上に変動を与える要因のことである。このコーザルデータと売上の関係を正確にとらえ、品揃えや価格に反映させていくことが重要である。このうち、気候要因と売上の関係に基づいたものをウェザー・マーチヤンダイジングという。

PI(Purchase Incidence)

 Pl値とは、POSデータ分析に用いられる代表的な指標である。Purchaseは購入、lncidenceは発生率のことで、ある一定(通常1,000人あたり)の購買客数の中で、当該商品を購買する確率を表す指標である。自社内の同カテゴリー商品の比較や、自社と他社あるいは全国的なPI値との比較を行い、売れ筋分析、棚割り、今後の商品戦略策定などに活用する。PI値には「金額PI」と「数量PI」があり、それぞれの算出方法は以下のとおりである。

陳列管理での活用

①プラノグラム
プラノグラムは、1月]割リシステムとも言われ、商品のブランドの強さ、包装形態や色などをどのように組み合わせたら、その棚の収益が最大になるかを考えることである。CGの発達によつて、多数の商品をどの棚にどのように配置すれば、その小売店の売上や利益を最大化できるかを、POSデータと組み合わせてシミュレートすることができる。

②ショッピングバスケット分析(マーケット・バスケット分析)
併買分析ともいう。ひとりの顧客が「何と何をいっしよに買う(カゴに入れた)か」を顧客が受け取るレシート単位で分析する。分析は商品の陳列場所や位置デー
タともあわせて行う。それにより、併買度の高い(あるいは高めたい)商品の関連陳列やセット販売を促し、客単価の増大を目指す。

顧客に対するプロモーションへの活用

 すべての顧客に同じプロモーシ∃ンをするのではなく、優良顧客の育成や選別を行い、優良顧客にはより手厚いプロモーションを行うという考え方が小売でも導入されている。代表的なものにFSP(Frequent Shoppers Program)とRFM分析がある。

①FSP(Frequent Shoppers Program)
FSPとは、高頻度で来店する優良顧客に注目し、その階層に応じてプロモーションを展開するしくみである。顧客にIDカードを持たせ、顧客の購買履歴をPOS夕
一ミナルから収集して、高頻度で購入する顧客に対して値引きやインセンティプの提供などのプロモーシ∃ンを展開する。

②RFM分析
顧客ごとの購買実績(データ)のうち、Recency(最終購買日)、Frequency(購買頻度)、Monetary(購買金額)の組み合わせで得点化し、ランク付けする分析手法である。その最大の目的は、自店にとっての優良顧客を見つけ出すことである。

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