販売促進

代表的な販売促進には、インストア・マーチャンダイジング、LSP、カテゴリーマネジメントがある。

インストア・マーチャンダイジング

定義

 ISMとは、マーチャンダイジング部門において決定されたマーチャンダイジングの計画と戦略を、店頭において実現しようとする活動であって、具体的には、計画された商品構成とそれに基づいて設定された商品を、店頭に陳列・演出することによって消費者に提示し、効率的で効果的な方法により、その販売を促進しようとする諸活動である。
ISMは、結果として資本(売場)と労働の生産性を最大化しようとする活動を意味しており、小売店頭における価値工学(VE)といえる。
 売上高の規定要因を分解すると、「売上高」=「来店客数」×「客単価」になる。「来店客数」の増加は広告などの店外活動が必要なため、多額の資源投入が必要である。これに対してISMは、投入資源の少ない店内活動によって実現可能であることから、「客単価の増加」が中心テーマである。「客単価の増加」は、「グレードアップ(商品単価増加)」×「買上点数増加」と考えることができ、これを目的とした、店舗レイアウト、陳列棚の管理、陳列法やフエイシングの管理、POPなどの設置、デモンストレーシヨンなどの技術が導入されることになる。

背景

 ISMの考え方が登場した背景は、最初から買い物を決めて来店する人が約1割なのに対して、店内で購買決定する日計画購買が約9割であるという点にある。非計画購買者により多くの購買を促すための売場生産性向上策がISMなのである。また、来店客数を増加させるためには、大規模な広告宣伝活動などの多額のマーケティング費用が必要になる。しかし、ISMの手法は、相対的に低コストで実施できる。

ISMの体系

 ISMにおけるスペースマネジメントとインストアプロモーションを実践していくことによつて、顧客が入店後に意思決定する非計画購員を促進することができ、買上点数の増加、つまり客単価のアップにより売上高の増力]が可能になる。

インストアプロモーシヨン

 インストアプロモーション(!SP)とは、小売店頭において、単なる情報提供に終わらず、ライフスタイル等に関する積極的な提案を行うことにより、顧客の動機形成や意思決定の過程に直接影響を及ばそうとする活動である。つまりは、店内における販売促進活動のことをいい、非価格主導型と価格主導型に分類できる。値引きなどの価格主導型インストアプロモーションを実施する際には、ただ闇雲に値段を下げるのではなく、需要の価格弾力性(値段を一定割合変化させた時の販売数量の変化の割合)が高いカテゴリーゃアイテムに絞つて実施する必要がある。
 価格主導型のインストアプロモーションは、消費者の購買意欲に対する刺激策として有効ではあるが、価格訴求への依存は様々な問題を引き起こすとされている。その問題の1つとして「参照価格の低下」があげられる。参照価格とは、)肖費者の過去の購買経験によつてつくられている記憶による価格を指す。例えば、「スナック菓子Aの価格はいくらか?」と聞かれて、自分が覚えている価格として「118円」と回答したその価格が参照価格に該当する。
 値引などにより参照価格が一度ダウンシフトされると、店頭表示価格はその参照価格を下回らないと購買されにくくなつてしまう。このような状況になると、店頭表示価格を次第に下げざるを得なくなり、その商品を販売しても十分な利益を確保できない、という流れになりかねない。現在、インストアプロモーシ∃ンは大半の小売業によって活発に展開されているが、次のような特徴があり、これらは小売業における課題ともいえる。

1)バーゲンなどの価格訴求が圧倒的に多い。
2)ポイント制度などの訴求も多いが、これは形を変えた価格訴求である。
3)ライフスタイル提案等、非価格的な提案は影を薄めている。
4)全社的なマーチャンダイジングの体系あるいは戦略と無関係に行われている。
5)年間計画に織り込まれたカレンダー化されたようなISPは少ない
6)効果測定やフィードバックは行われず、投入した費用の効率化も行われていない。

クロスマーチャンダイジング

 クロスマーチャンダイジング(CMD)とは、カテゴリーにこだわらず関連商品を併せて陳列することにより、売上拡大をはかる販売手法である。つまり、特定の生活テーマのために、単品商品ではなく、関連商品を含めた品揃えと演出で販売することである。たとえば、焼き肉と焼き肉のタレのように、すべての生活テーマは単品で済むものではなく、多様な商品のコーディネートによって対応しなければならないという考え方で、その要請に応じるのがCMDである。

スペースマネジメント

 売場スペースを最大限に活用し、売場生産性を向上させる手法である。顧客1人当たりの自店での買上金額が客単価であり、次のような規定要因から成り立つとされている。

「客単価(買上金額) = 動線長 × 立寄率 × 視認率 × 買上率 × 買上個数 × 商品単価」

LSP

 LSP(Labor Scheduling Program)とは、誰が何時から何時までどの作業をどれくらい行うかを決める計画であり、作業割当計画ともいう。LSPを導入する際には、業務項目の洗い出し、業務手順の標準化、変動作業や固定作業の時間測定などが必要となる。POSシステムの普及により、曜日別や時間帯別で売上数量データを把握できるようになり、LSPの有効性が向上した。LSPはデータに基づいた人材の適材適所、最適配置を図り、人件費をさせないで顧客サービスを向上させることを目的としている。

カテゴリーマネジメント

定義

 ECRの重要要素であるカテゴリーマネジメントは、ブライアン・ハリスが提唱した概念である。その定義は「カテゴリーを戦略的ビジネス単位として管理していくことであり、消費者に価値を提供することに集中することによって、業績を改善していくこと」である。製販のコラボレーシヨンを前提としたECRの中で、商品導入、販売促進、自動補充などの仕事を、単品レベルではなくカテゴリーレベルで行うという考え方が基礎にある。
 つまりブランドや商品ライン、アイテムといった単位ではなく、,消費者の視点に立って商品カテゴリーを組み立て、それを戦略的なビジネス単位として消費者に提案し、消費者の購買促進や販売側の管理体系をつくろうとする経営概念のことである。たとえば、肉や野菜、飲料といつた商品ライン別ではなく、「消費者にとって意味のある購買単位」をカテゴリーとして陳列・販売し、消費者に対して提案する。そして、小売業はカテゴリーごとの組織体制によって、店舗構成や損益計算などが管理され、メーカー別のバイヤー型組織からカテゴリーマネジメント型組織に変更されることを意味している。

役割

 商品によって、購入のされかたは以下のように異なるが、関連購入の比率は非常に高いことがわかる。そのため、ニーズに着目したカテゴリーマネジメントにより買上点数が多くなり、客単価さらには売上高が増加するという結果になる。

1)目的買い: 売上構成比の5~ 10%(例:紙おむつ)。
2)関連買い: 売上構成比の約55~ 60%。ニーズの共通性や関連性で購入されるもの(例:紙おむつに対する乳児玩具や子供服など)。
3)季節買い: 売上構成比の5~ 10%。季節目的買い(例:扇風機)と季節関連買い(例:風鈴)がある。
4)ついで買い: 売上構成比の25~30%(例:紙おむつを買うついでの安価なおもちゃ)。

・関連用語: マーチャンダイジング売場レイアウト商品陳列店舗

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