卸売業の物流の特徴
卸売業の物流のミッションは、「顧客(小売業)が発注した商品をできるだけ早く、間違いなく届けること」である。よつて、受注から納品までのリードタイムの短縮やミスのないピッキングの仕組みが求められる。特徴は、次のとおりである。
1)納入業者数が多い:多数のメーカーから商品を納入され、入荷作業が煩雑となりやすい。
2)在庫商品のライン・アイテム数が多い:小売店頭の充足が目的であるため、膨大な商品ラインとアイテムを取り扱い、保管している。
3)多頻度小口配送:小売店頭在庫を削減するために、ケース単位からピース(個装)へと小口化し、さらに多頻度配送も要求されている。
4)欠品を回避する:品切れ、ピッキングミスは小売業にとって機会損失となる。
5)人件費率が穫]い:ピッキングや仕分け、流通加工など手作業が多く、物流センターの総費用の50%以上が人件費といわれている。
以上に挙げた問題や課題を解決するために、情報システム(受発注システム、仕入在庫管理システム、倉庫内システムなど)を有効活用している卸売業が多い。
卸売業の物流の倉庫(物流センター)内作業
入荷
メーカーからの商品の荷受けで、コンピュータで打ち出されたリストをもって、作業員が目で現品と注文内容の付け合わせ作業を行う。最新のシステムでは、メーカーから事前出荷明細(ASN:送り先に対して商品を出荷する前に電子データで伝達する事前出荷情報)を入手し、ハンディ端末を使用してケース(段ボール)のITFコードなどをスキヤンすることで、リアルタイムに入荷処理を行っている。
保管
入荷商品を保管棚に、先入れ先出しとなるように商品を移動させる。倉庫内に商品をどのように格納するかの「ロケ…ション管理」も重要であり、ルールによって3通りの方法がある。
固定ロケーション
棚と商品を固定的に対応させる方法である。定番商品の割合が多ければ向いているが、商品がなくても場所はキープされるので一般にスペース効率は悪い。
フリーロケーション
棚と商品の対応にルールをもたせない方法である。入庫時に最適と判断する場所をシステムが決め、そこに格納する。自動倉庫システムが前提と考えてよい。
セミ固定ロケーション
固定とフリーの中間的な方法である。商品グループごとに保管区域(エリア)を決め(固定)、その中ではどこにおいてもよい(フリー)という方法で
ある。
ピッキング
注文にしたがって、作業者(ピッカー)がリストを片手に、商品を棚から取り出し、台車に投入する作業である。最新のシステムでは、ケース商品はITFコードなどを用いて自動仕分け機でピツキングする。ピース商品はデジタルピッキング(棚にライトを取付け、作業者はライトの点減指示により必要数量をピッキングする仕組み)や無線カートビッキング(作業者が無線カートの指示媒体にしたがつてピッキングする)を用いるケースが多い。なお、ピッキングには、次の2つの方式がある。
トータルピッキング
別名種まき方式ともいう。総数をピッキングして、後で店単位に振り分ける方法。出荷する商品を一度にピッキングし、その後出荷先別に仕分けをする方法である。少品種多量の注文状況に適している。一度にピッキングすることから、作業動線を短縮できるという長所がある。しかし、仕分け作業に熟練度を要するため、一般的に自動仕分けを導入することで効率を上げる方法がとられている。
シングルピッキング(つみ取り方式:店単位にピッキングする)
顧客となる店舗や注文先別に商品を集品して歩くピッキング方法である。多品種少量で、注文先が多い場合に適している。作業者が倉庫内を移動して集品する場合は、移動距離が長くなるという短所がある。なお、作業者は移動せず、商品を自動的に搬出するシステムもある。
流通加工
値札の発行や貼り付けのことで、小売店の発注単位商品に包装する作業も含まれる。人手とコストがかかるのが課題となっている。
仕分け
顧客別、店舗別に商品を分類すること。最近では、商品分類単位であるカテゴリー別、小売店舗の通路別、などの単位で仕分けを行っているところもある。
出荷
出荷検品を行い、 トラックヘ積込んで出荷する。カゴ車積みとべ夕積みがある。カゴ車積みの方が積み降ろしは早い一方で、積載効率は悪くなる。
卸売業の現状と課題
卸売業の重要な存在意義の1つに物流機能がある。その役割は、多くの生産者から多くの商品を集め、それを組み合わせて多くの小売業者や消費者などに供給する「集荷分散」である。1970年代以降、間屋無用論が巷でささやかれていたが、20世紀中は卸売業の発展が続いた。しかし、21世紀に入つてからは、卸売業の吸収合併や再編、中小卸売業の淘汰が加速している。これは、メーカーが販売会社や専門卸売機能を保有したり、チェーンストアが物流システムを高度化させたりしたことなどが大きな要因となつている。また、物流コストの上昇に対して、付加価値の低い卸売業が経営的に耐えられなくなつている点も挙げられる。平均的な卸売業の粗利益率は10~ 15%といわれているが、売上高に対する物流費用比率が約5%を占めることから、粗利益率の半分から3分の1が物流費用で消失してしまい、販売管理費を賄うことが困難になつてきている。その結果、営業利益が赤字となっている卸売業は少なくない。
今後の卸売業の物流改善には、物流の効率化と同時に物流サービスのアップを実現する物流システムの開発、さらには高度な情報化が必要であるが、これは至難である。そのため、物流改善という一方向ではなく、経営戦略との関係で物流のあり方を検討することが求められる。市場標的と機能強化の2軸の組み合わせが、今後の方向を探る上で有効である。