定義
CRMはCustomer Retationship Managementの略で、顧客関係管理のことである。顧客管理は、顧客の情報や売上などの情報を管理することのみではなく、顧客との「関係」を構築することに重点が置かれる経営手法である。
CRMの活用方法
CRMでは、例えば、顧客の購入履歴、セミナーや展示会への参加履歴、営業訪間履歴、苦情や意見、年齢や性別(デモグラフィックデータ)、地域(ジオグラフィックデータ)、性格や好み(サイコグラフィックデータ)などの情報を管理する(BtoBまたはBtoCなどの場合により、管理する情報が異なる)。CRMでは顧客の基本的な情報のほか、個別顧客と企業との「接点」を記録する。
CRMでは、蓄積したデータを活用して顧客をセグメンテーションし、各セグメントのニ―ズや行動パターンにあつた商品・サービス・情報を提供することができる。例えば、購入履歴データベースをRFM分析して優良顧客を抽出し、イベント招待などのDMを送付したり、期間内無利用顧客を抽出し、購入を促すためにクーポン付きDMを送付したりする。
つまり、見込み客(ターゲット)に有益な情報をピンポイントかつタイムリーに届けることができ、企業にとっては広告宣伝費が抑えられるだけでなく、顧客の購買金額を高めたり、優良顧客を維持したりするなど、中長期的な顧客との関係を構築するために活用することができる。
なおCRMは、必ずしも大規模なシステム(コンピユータソフトウエア)の導入が必要になるとは限らない。紙のカルテを利用したシステムでもCRMを実践できる。しかし、大量のデータの分析や管理を行う場合には、適正な規模のシステムを導入することが望ましい。
CRMとLTV
LTV(Life Time Vatue)は、「顧客生涯価値」または「生涯顧客価値」と訳され、ビジネスにおいて(個別の顧客の単発購入を重ねるのではなく)、同一顧客の連続的な購入によって利益の最大化を図る考え方である。LTVはCRMの中心概念である。CRMでは、企業が顧客視点に立ち、顧客との間に良好な長期的関係を構築することで、顧客の利便性・満足度・信頼度を高めて、LTVの最大化(企業利益の向上)を目指す。
LTVは顧客1人1人ごとに異なるものだが、売上やコストを個々に計算するのは困難なため、実務上、上式を用いて実際に計算することはほとんどない。ただし、「顧客単価」や「リピート率」を高めながらも、「顧客獲得・維持費用」を抑制するという考え方は重要となる。以下は、LTVを最大化するための方法である。
・平均購入単価を増やす
・購買頻度を増やす
・継続して顧客になってもらう
・顧客獲得および維持コストを減らす
「売上」を増やすには、「顧客数を増やす」や「顧客あたりの売上を増やす」方法がある。しかし「顧客数を増やす」ためには、新規顧客の獲得が不可欠となり、広く認知してもらうための広告宣伝費などがかかる。一方、既存顧客からリピート購入や関連商品の購入を狙う場合では、新規顧客の獲得に比べて、コストや労力の点で有利となる。CRMを適切に実施すると、個別の顧客の嗜好が把握できるようになるため、「顧客あたりの売上を増やす」ことが容易となる。また、市場規模が拡大している成長市場では、マーケットシエア(市場占有率)をあげるために新規顧客の獲得に重点を置くことがある。しかし一旦市場が飽和すると、新規顧客獲得は困難となり、継続してビジネスを拡大するためには、LTVに着目する必要性が生じる。
商品・サービス購入後のインターネット利用とLTV
消費者はパソコン、スマホ、タブレットなどにより、いつでもどこでもインターネットに接続し、様々な情報に触れている。近年では、ソーシャルメディアを通じて、消費者が商品・サービスの情報を獲得するだけでなく、)肖費者自らも情報を共有するようになってきている。信頼のあるネットワークから得る情報は、人間の心理や購買行動に大きな影響を与える。つまリソーシャルメディアの議響は、企業にとって無視できない存在となっている。
自社の商品・サービスを購入した顧客が、その経験(体験)をインターネットで共有することで、さらなる売上拡大につながることがある。良い経験を得た顧客は、企業やブランドヘのロイヤリティ(愛顧)が高まり、LTVにおける「継続購入期間」が伸びやすい。また、その経験がロコミの発信となつて、企業の認知度の向上につながり、さらなる顧客の開拓につながることがある。