標準時間の設定方法

 標準時間の設定に用いら れる方法とし ては、次のようなものがあり、それぞれの適する作業、精度、特徴をまとめると以下の表のようになる。各手法については、以下にて詳述する。

手法 適する作業 精度 特徴
ストップウォッチ法 サイクル作業 良い 実施が容易
経験見積法 個別生産で繰り返しの少ない作業 悪い 経験に頼るため主観的になりやすい
標準時間資料法 同じ要素作業の発生が多い作業 良い 標準資料の整備に時間がかかる
PTS法 短サイクル作業、繰り返しの多い作業 良い 分析に時間がかかる

ストップウォッチ法

作業をいくつかの要素作業に分解し、要素作業ごとにストップウォッチで時間を 測定する。この測定時間には作業者の個人差があるのでレイティング(時間値の修 正)処理を行う。さらにワークサンプリング法により余裕率を算出し、それぞれの 要素作業ごとに余裕率を加味して標準時間を求める方法である。なお、通常の時・ 分・秒ではなくデシマル単位(lDM(デ シマル)=1/100分 )で計測するデシ マルストップウォッチが用いられることがある。

実績資料法

過去の実績資料を基礎に標準時間を見積る方法で、個別生産で繰り返しの少ない 作業に適している。標準時間を求めるための手間や費用は少ないが、精度が低いと いう欠点がある。

経験見積法

熟練工や監督者などの経験者が、過去の経験的判断から時間を見積り標準時間と する方法で、個別生産で繰り返しの少ない作業に適している。主観的であり見積り者のくせが出る、半 断基準が変化するなどの特徴がある。

標準時間資料法

「 作業時間のデータを分類・整理して、時間と変動要因との関係を数式、図、表 などにまとめたものを用いて標準時間を設定する方法JiS Z 8141-5506」 である。 つまり、過去に測定した作業単位ごとに時間値を作業条件に合わせて合成し、標準 時間を求める方法である。直接時間を観測する必要はないため、その手間はない。 ただし、広い範囲の仕事に適応させるためには、細かな作業単位別に標準資料をま とめてお<こ とが必要となり、その手間がかかるという欠点がある。

PTS法 (Predetermined Time Standard System:既定時間法 )

作業を微動作(サーブリッグ)レベルまで分解し、あらかじ め定めた微動作ごとの作業時間値を積み上げて、標準時間を求める方法である。微動作レ ベルでは作業 者の個人差がなく、一定の時間値が求められるという考え方に基づいているため、 レイティングを必要としない。

PTS法のメリット PTS法のデメリット
  • レイテイングの手間を必要としない。
  • 標準時間の一員性を保つことが容易になる。
  • 分析者は時間値よりも、むしろ作業方法に意識を集中できる。
  • 動作と時間値の関係を認識でき、作業改善に有効である。
  • 作業開始前によりよい作業方法を設定できる。
  • 標準時間資料を作成しやすい。
  • 平均的な作業を対象に選択された時間値を使用しているため、その条件 に適合しない作業は時間値の補正(レ イテイングのことではない)などが必要になる。
  • 機械や道具によリコント ロールされる作業には適用できない。
  • 標準時間の設定に長時間を要する。
  • 一般的にストップウォッチ法の4~ 10倍の時間を要するとされている。
  • 正確に分析するためには専門的な訓練と十分な経験を必要とする。

 

・関連用語: 標準時間

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