セル生産

概要

 セル生産とは、異なる機械をまとめて、機械グループを構成して工程を編成する場合の生産方式で、その機械グループをセルとよんでいる(異なる機械ではなく、類似の機械(機能)をまとめてグループを構成した配置を機能別レイアウトというが、両者の違いに留意すること)。このセル生産方式は、グループテクノロジー(GT)を利用したもので、使用する部品の類似性に基づき部品は(類似の加工工程により作られる部品群として)グループ化され、それに対応する機械もグループ化した生産が可能となる。このようにグループ化して生産することにより部品の運搬の手間や間接作業が減少し、時間短縮と仕掛品の削減が可能となる。
 なお、コンベヤラインを用いずに、 1人の作業者や複数の作業者が製品を組み立てる方式をセル生産とよぶことがあるが、GTが利用されていないと、学術的にはその名称は適切ではないともいわれている。1人生産方式は、屋台生産方式、組立セルなどともよばれ、コンベヤラインを利用せずに、設備をU字型に配置する、小ロットあるいは1個流しで生産する、1人の作業者が複数の工程を担当する(多能工)生産方式である。

補足

 補足として、1人生産方式とは、「1人の作業者が通常静止した状態の品物に対して作業を行う方式で、複数の作業者が協働して作業を行う場合もある。また、ライン生産方式の対極をなす方式JIS Z 8141‐3405」である。この方式は、多能工と∪字ラインから派生した生産方式で、 1人の作業者が検査を含めたすべての作業工程を行うものである。作業の単調感が減少し、能力に応じたスピードで作業ができるため、モチベーションが高まり、作業者間で生じる仕掛品も除去される。その反面、複雑な作業の場合は、習熟するまで長時間を要する、いわゆる習熟ロスが発生する。
 U字ラインとは、設備は∪の字状に配置され、一般のライン生産方式と違って作業者は設備に固定されない。1人で複数の作業工程をこなすことから、作業の所要時間や作業者による作業速度の相違による工程間の待ち時間が発生せず、適切な作業の割当てを行いやすい。さらに作業者は∪の字の内側に置かれるため背後の工程ヘもわずかな移動で対応でき、作業効率がよい。また、レイアウト上、工場の作業ス
ペースも多く必要としないというメリットもある。
 また、通常のライン生産方式では、生産量を変更するたびにライン編成をやり直さなければならないという欠点がある。これに対して、U字ラインでは、生産量に応じてラインの作業者数を変更して生産量を変更することも比較的容易である。U字ラインを採用する場合、作業者は複数の作業工程を受け持つことになるため、作業者の多能工化が前提となる。このため複雑な作業が多いと作業者の習熟度を上げるのに時間がかかり、生産性の低い状態が長くなるというデメリットもある。

セル生産のメリット・デメリット

セル生産(U宇ライン・1人生産方式)のメリットとデメリットを以下にまとめる。

メリット

  • ライン生産方式に比べて工程間のバラツキが最小化され、工程内の仕掛品が少なくなる。また、同期化が進み、作業効率がよいため、生産性の向上が期待できる。
  • ライン生産方式に比べて、製品ライフサイクルの短命化、多種少量生産(変種変量生産)に柔軟に対応しやすい。
  • 作業者が主体の生産形態であり、ライン生産方式に比べて設備投資の負担が少ない。自動化などでの高額な設備が比較的少なく、少額の設備投資で済む。
  • 作業者は多能工となるため、モチベーションが向上し、技術伝達も確実に行われる。
  • ライン生産方式に比べて、不良を作り続ける前に素早い対策を打つことができる。

デメリット

  • 多能工化への作業者の育成が容易ではない。
  • 新製品への切替えの際、習熟期間が長くなる可能性がある。スキルの低い状態が続くと生産性も低い状態が続くことになる(習熟ロス)。
  • セル生産方式を軌道に乗せるためには、優れた生産技術者、生産管理者、現場管理者、実際に作業する熟練作業者が必須である(留意点)。
  • セル生産方式に適した「製品設計」「生産設計」「組立容易性」が必須である。1人ですべてを生産することを考えれば「作りやすさ」はさらに重要となる。作りにくければ生産コストが上昇する(留意点)。
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